もし、目の前に幽霊が現れたら、あなたならどうする?
そんな経験をするのが主人公の令子だ。令子が昼と夜の境目のわずかな一瞬、黄昏時と呼ばれる時間帯に小径で白いロングドレスのような服を着た長い髪の女性に出合う。そこで「間違いなのよ」という言葉を令子に言うところから、この物語が始まる。
内容としては、令子の周りで次々と事件がおこり、次々と人が亡くなり、弟の事故死、祖父、両親の不倫、母親の死など、暗い題材で書かれているが、これを作者の筆によって、暗さを出さず、人間とは何か、心のもろさを書き表している。
最後に亡くなった母との会話。あの、白い女性に出合ったあの時間、あの小径で母と出会い、寂しさを訴える令子に母は優しく励ます。いつか、恋をして、結婚して子供ができ、ここへ来る暇もなくなり、いつしかこの径のことも忘れる。忘れるとは大人になること。
さあ、あなたなら、この言葉をどう考える?
(文/ののこ)