この物語は8つの事件からできている。それぞれに新聞記者、検察官、婦人警官、刑事など、いろいろな人の目を通して書かれた短編集で、その中で共通している人物が一人いる。
それは『終身検視官』と言われている、倉石義男。校長といわれるほど、彼を崇拝している刑事や検視官たちが大勢いる。そんな彼が様々な事件を手がけ、一見自殺と思われる死を実は殺人事件だと看破したり、他殺だと思われる死を自殺だと、彼は眼力のすごさで次々と解決していく。
読み始めていくと、死と生について考えさせられていく。まさに人間愛が込められた一品であるといえよう。
(文/ののこ)