横山秀夫「第三の時効」

「犯人か、刑事か。追われているのはどっちだ。男たちのほこりがぶつかりあう。これが警察小説の白眉!」(帯より)

警察小説を手がけたらこの人しか思い浮かばないだろう。 「半落ち」「顔」など。

ここには6つの短編が収められている。犯人と刑事の心理的葛藤と戦いが現されている。

F県警本部ビルにある捜査一課は三つの班に分かれ、事件をとおして、プライドをかけライバル心をもって事件を解決しようとしている。刑事としての苦悩、心の葛藤、部下から上司にむけた不信感、上司の苦悩が見事なタッチでかかれている。

その中で唯一の主人公、捜査第一課強行班班長朽木泰正、彼はある事件をとおして絶対笑わなくなっていた。なぜ笑わなくなったかというと、最初の沈黙のアリバイの冒頭にでてくる、この一文に結びついてくる。

「二度と笑わないでください。死ぬまで笑顔を見せないと約束してください。たっちゃんはもう笑えない。笑いたくても笑えない。あなたがそうしてしまったのです。いつまでも覚えていてください。 たっちゃんを死なせたこと、片時の忘れずにいてください。どうかお願いします。死ぬまで笑わないと誓ってください。」

幼子をもっていた母親から言われた言葉、朽木の心にどのようにのしかかっているのだろうか。ただ一つ言えるのは刑事も人間であるということ。

あなたも横山ワールドをたのしんではいかがだろうか。

(文/ののこ)

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