篠田節子「逃避行」

何故か色々と考えさせられる小説である。主婦って何なのだろう。家族って何なのだろう。主人公は50代の主婦、更年期障害を抱え、家族とは心が通わなくなってきていた。

ある日、飼い犬のゴールデンリトリバーのポポが、彼にいたずらばかりをする隣家の子どもをかみ殺してしまう。世間体を考え、愛犬を処分しようとする家族。

彼女は愛犬を守るために夫が内緒で土地を買うためにためたお金を持ち出し、一人と一匹は逃避行に走る。たよる相手は誰もいない、信じる相手も誰もいない。心の変化の微妙さがリアルに書かれていて、読み手を誘っているように思われる。

彼女は家族の愛を取り戻せるだろうか。

私も今、彼女と同年輩になるけれど、何故か身につまされる物語である。

(文/ののこ)

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