佐野洋「兎の秘密 昔むかしミステリー」

アダルト版日本昔話といってもいいだろう。

作者が子供の頃から馴染んでいる昔話を別の観点から眺め、それを推理仕立てにして書かれている8話の短編集である。

本の題となっている「兎の秘密」とは「かちかち山」の話だ。「桃太郎」や「金太郎」には歌があるのに、なぜこの「かちかち山」には歌がないのだろうか。そこから話がはじまっている。たぬきとうさぎの怪しい関係。その話が15年前に起こった殺人事件の真相をあぶりだしていく。

「桃太郎は意地悪」子供が書いた詩から桃太郎は本当に意地悪だったのか、犬、キジ、猿と吉備団子の関係。彼らに対して桃太郎の気持ちとは。

「亀の正体」は「浦島太郎」の話をもとに亀は実はタイムマシンだったという話。

「教訓・花咲爺」は良いおじいさんと悪いおじいさん本当はどっちが悪者だったのか?

「蟹の証言」は「サルカニ合戦」をもとに自分の星座が蟹座だから申年の男性とはつきあうことが出来ないという一人の女性。その女性がつきまとう会社の上司を警察に訴える。そして彼はバスの中で痴漢容疑で捕まってしまう。はたして本当に彼は罪を犯し、彼女につきまとっていたのか?

「打出の小槌」の効果は「一寸法師」をもとに一寸法師は最後に小槌によって大きくなってお姫様と結婚したという話は定番であるが、後日談があるらしい。お姫様が病気になってしまい、助けるためにまた小槌によって元の大きさにもどり助けるという話だけど、まるで映画の「ミクロ決死圏」みたいだ。一寸法師と内視鏡との深い関係は?

ということで、いくつかあげてみたけれど、意外と別の観点や皮肉をこめて読んでみるとまた新しいおとぎ話が生まれるのではないだろうか。

(文/ののこ)

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