以前、テレビでグレープが歌う精霊流しの曲が流れ、彼が弾くバイオリンのもの悲しい音色を聞いたとき、なんて素敵で悲しい歌だろうと思った。同年代の彼の曲は時には、もの悲しく、時にはコミカルな歌をわたしの心に運んできてくれる。
私の町に移動図書が来たとき、ふと本棚に目をやったとき、この本と行き会えた。その本は、主人公雅彦の少年時代からの回想から始まる。色々な挫折、希望、仲間、そして身近な人の死を通して大人になっていく、そんな彼の心の変化が鮮やかなタッチで書かれているような気がする。
彼が生まれた昭和27年、その年は私にとっても生まれた年である。この本を読みながら、同じように青春を送ってきた私にとって、なおさら身近に感じられる小説といっていいだろう。 私は、あの頃はあんな青春があったのだと懐かしめる、私や雅彦と同年輩の人にも読んで貰いたいし、また今まさに青春真っ盛りの若い人たちにも読んで貰いたい本だと思います。
(文/ののこ)