作者の石黒耀、職業は勤務医である。この死都日本が処女作である。
この小説のプロローグは、ローマ帝国ヘルクラネウムの悲劇から話が始 まる。そこは西暦79年火山の噴火に見舞われ、巨大化した怪物が町を埋め尽くし、 130年間の眠りにつかせるところから話が始まる。
さて、20XX年の日本へと話がつづく。 九州宮崎県で大規模な地震が起き、日南海岸に津波が起き、日南沖地震と命名された。そしてその影響か奇妙な現象が翌日から群発地震の形で発生、震源地から西に90キロも離れた霧島火山帯一帯で・・そこからこの物語は始まる。
舞台は九州、東京の永田町の首相官邸、アメリカ合衆国、などめまぐるしく変わる。首相と大統領の駆け引き、国立日向大学工学部防災工学教室助教授、黒木伸夫と、宮崎日報の新聞記者岩切年昭の二人が主要人物である。とくにこの黒木が火山おたくといわれるほど、知識がある。この小説には二つの物語が隠されている。「古事記」と「ヨハネの黙示録」である。
霧島に入った彼らを待ち受けていたのは、迫り来る火砕流、それはあの雲仙普賢岳の火砕流よりも数倍もの大きさである。いかに彼らは逃げおおせるか。手に汗握る迫力である。そして、それに誘われるかのように起こる東海地震の発生、いったいこの日本はどうなるのか。
(文/ののこ)