浅田次郎「闇の花道―天切り松闇がたり〈第1巻〉」

三部作の第一巻である。

その老人が雑居房にやってきたのは、就寝時間をとうに過ぎた夜更けだった。この書き出しで始まる、この小説。一体どんな話が始まるのか、気になる書き出しである。

どんな悪いことをして留置場へきたのか。留置場で留置人や、看守たちを相手に独特の口調闇がたりではじまる、老人村田松蔵こと天切りの松の昔話がここで始まる。

闇がたりとは六尺四方から先へは、届かないという、夜盗の声音のことをいう。この第一巻は松蔵の子供の頃の話である。母は病死し、ばくちで身を滅ぼした父により姉は身売りされ、松蔵は盗人「仕立屋銀次」の子分「抜け弁天の安吉」に預けられる。そのとき数え9つだった。

この小説は粋でいなせな盗人たちが大正時代を舞台に意地と見栄と命をかけている。松蔵と姉との再会と死。見事な語り口調で、かかれている。毎日語られていく松蔵の話を留置人や看守たちは胸をわくわくさせながら聞き入っていく。

人生とはなにか、本当の盗人とは何かを義理と人情の世界で教えてくれる。

さあ、あなたも松蔵の闇がたりを聞こうじゃないか。

(文/ののこ)

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です