藤田宜永「異端の夏」

この小説の舞台は信州の軽井沢、佐久が舞台になっている。

ある日ひとりの少年が行方不明になる。そこから事件がはじまる。誘拐か?
主人公刑事辰巳幸輝の目を通し、犯人を追いつめていく。

そこには人間同士のどろどろとした感情が描かれており、辰巳と少年の母との心と愛の葛藤が見事に描かれている。

また、少年の祖父、祖父の父親の暗い過去が、事件の背景となって、この話を引っ張っていく。最後のところに辰巳が少年の母に対する感情が書かれている。

「康子は自分にとって、喉が猛烈に乾いた人間がやっと口に出来た一杯の水かもしれない。その水を手に入れるためにすべてを失った。だが、後悔は微塵も感じなかった」

事件を通し、刑事をやめた主人公の心が見事に表された言葉だと思う。

(文/ののこ)

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