ある結婚式場から一人の花嫁が消えた。話はここから始まる。
「逃げなきゃ、あいつから逃げなきゃ」
花屋で働く三田村夏季を一つの謎の影が追ってくる。その影を見るたび に恐れ、逃げる彼女。
神奈川県下では連続婦女暴行事件が起きる。その事件を追う、刑事部長小田垣。彼に近づく謎の美女摩衣子。過去の事件、そしてこの事件、小田垣、そして夏季の二人の過去をめぐ って、事件は絡み合っていく。そこには蘭の花が関わり合ってくる。
この小説には、女性の心の中が作家が女性であるために生き生きと書かれている。追う者と追われる者のスリル。読む者を引きずり込む魔力が何とも言えない。そして最後は見事な逆転で終わる。
(文/ののこ)