これは意外なものが主人公になって、彼や彼女の目をとおして、事件を見つめていく手法をとっている。
それはなんと「財布」なのよね。擬人法をとったこの作品が面白さをかもし出していると思う。金は天下のまわりものなんて昔から言われてるけれど、きれいな金、汚い金、どんなお金でも私には関係ないわ、なんてすました気持ちでお財布におさまっている。
この小説はお財布の気持ちになって、その持ち主の感情、行動、会話、お金のながれが事件をあぶり出し、解決へと導いていく。お財布は一個だけでなく、刑事、強請屋、少年、死者、犯人などなど、10個のお財布が出てきて、彼らの目をとおして事件がかかれているのが意外と面白いと思う。
(文/ののこ)