事実は小説より奇なりなんて言葉があるけれど、まさか現実に起こってしまうとは。
現実の方は殺人事件は起こらなかったけれど、某テレビ局において、一人の社員が探偵を雇い、自分の番組の視聴率アップを狙って、あのような事件を起こすとは思わなかった。それほど、視聴率というのはそれを作った人間の人生性格までもかえてしまうのだろうか。
さて、本題に入ろう。青山栄一は業界4位の視聴率の低迷する太平洋テレビの編成課長である。上司のホテルからの墜落死、それは視聴率調査会社からのサンプルリストを買収した不正発覚をおそれての自殺とされた。そこには自殺とされた男性の対立編成局長、調査会社の常務、大手プロダクションの社長という三者の黒い糸が絡み合っている。その糸を青山はたぐり寄せほぐしていくのか。
最後にこういう言葉が書かれている。
「視聴率というものは、絶対ではありません。それでいて人を苦しめ喜ばせるデーモンなのです」
この言葉は現実に起こった、あの事件と結びついてくるのではないだろうか。この小説は二〇〇一年に書かれた小説である。
(文/ののこ)