第42回「創作童話『なつやすみ』(前編)」

僕は、小学三年生。夏休みに、田舎のおばあちゃんちに行く事になったんだ。一人で行くから少し不安もあるかな。

「次、遠山翔太君!」

終業式の日、先生がみんなに通知表を渡す。

「はい、遠山君は、欠席が一日もないよ。皆勤賞だ。」「へへへ。」

肝心の成績はと言うと、まあまあかな。だんだん、あっちの席からもこっちの席からも、いろんな声が聞こえてきた。

「はい静かに!明日から夏休みだけど、調子に乗って夜ふかしとかしないこと。出校日には、みんなの元気な顔が見られる事を楽しみにしています。それでは、さようなら。」「さようなら。」

教室を出ると、家まで走って帰った。

「ただいま。」

台所に行くと、もうお母さんがお昼ご飯を作って待っていてくれた。

「おかえり、一学期よく頑張ったね。」「へへへ。通知表は、まあまあだったかな。いっただきまーす。」

さっそく、お母さんが作ってくれたオムレツを口に入れる。ふんわりしてて、中はとろとろだった。

「もう、おばあちゃんに電話しといたから、それ食べたら支度しなさいよ。」

ついに来た。今日、電車に乗って出発する。支度と言っても昨日の夜に、必要な物は全部リュックに詰め込んである。

そして、お昼ご飯を食べ終わった僕は、駅のホームについた。お母さんも見送りに来てくれた。ガタンゴトンガタンゴトン、シュー。電車が到着した。

「じゃあ、分からない事があったら駅員さんにでも聞くんだよ。」「うん。」

電車は、ゆっくり動き始めて気がついたら、すごく速くなっていた。窓の外を見てみると、遠くの方に大きな山が見えた。何回か乗りかえたあと、やっと着いた。

「おばあちゃん。」

しわくちゃな笑顔で、おばあちゃんは待っていてくれた。

「よく来たね。疲れただろ?おじいちゃんも家で待ってるよ。」

ガラガラ、玄関の戸を開けると、畳の匂いがぷうんと鼻の中に入ってきた。

「こんにちは。」「おお、翔ちゃんよく来たね。しばらく見ないうちに大きくなったもんだ。」「へへへ。」

汗でべとべとしていたので、お風呂に入った。おじいちゃんも一緒だ。お風呂から上がると、いつの間に用意したのかと思ったほど、たくさんの料理が並べてあった。

「いっただきまーす。」

何だか自然の味がした。おじいちゃんが言うには、近くの畑でおじいちゃんが自分で作ったからだそうだ。

(後編につづく)

【元記事:B-Search NEWS No.1351】

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