第43回「創作童話『なつやすみ』(後編)」

次の日、僕は近所を探検してみる事にした。近所と言っても、周りは山ばかりだ。

まずは、神社に向かった。ミーンミンミンミーン。木には、たくさんのセミが止まっている。

「ようし。」

持ってきた網をのばすと、勢いをつけてセミの上にかぶせた。

「へへへ。」

続けてどんどん取っていたら、虫かごの中はすごくうるさくなっていた。その時だった。急にサーッと風が吹いてきた。

「うまいんだね。」

気がつくと、木の横に僕と同じくらいの背の女の子が立っていた。

「こんにちは。ここの子?」「うん、そうだよ。サキって言うの。君は?」「翔太。夏休みだから、おばあちゃんちに遊びに来てるんだ。」「そっか。私は、ずっとここにいるんだ。」

また、風が吹いてきた。木がゆれて、夏なのに涼しくなった。

「気持ちいいね。」

とサキちゃんが言った。

「そうだね。」

それから僕は、サキちゃんがセミ捕りを教えてほしいと言ったので、教えてあげた。

「もうそろそろ、お昼だね。また来るよ。」「うん。あっ、そうだ。お礼にこれあげるよ。」

ビーズで作ったネコだった。

「ありがとう。」

家に戻ると、おじいちゃんも畑から帰ってきていた。

「どうだ、都会と違って、いい所だろ?」「うん。自然に囲まれて良い所だよ。」「ハハハ、いっちょまえな事言うようになったなあ。」

昼ご飯を食べ終わると、走って神社まで行った。だけど、神社には誰もいなかった。もちろんサキちゃんも。

夕方になるまで待ってみたけど、サキちゃんは来なかった。もう帰ろうとした時、また風が吹いてきた。後ろをふり返ると、サキちゃんにあずけておいたはずの虫かごが置いてあった。

夜、おばあちゃんとおじいちゃんに聞いてみたけど、そんな子知らないと言う。

その次の日も、またその次の日も神社に行った。聞こえるのは、セミの鳴き声だけだった。

でも僕のポケットの中には、サキちゃんからもらったビーズがある。また、来年になったら来ようと思った。

【元記事:B-Search NEWS No.1352】

関連記事