次の日、僕は近所を探検してみる事にした。近所と言っても、周りは山ばかりだ。
まずは、神社に向かった。ミーンミンミンミーン。木には、たくさんのセミが止まっている。
「ようし。」
持ってきた網をのばすと、勢いをつけてセミの上にかぶせた。
「へへへ。」
続けてどんどん取っていたら、虫かごの中はすごくうるさくなっていた。その時だった。急にサーッと風が吹いてきた。
「うまいんだね。」
気がつくと、木の横に僕と同じくらいの背の女の子が立っていた。
「こんにちは。ここの子?」「うん、そうだよ。サキって言うの。君は?」「翔太。夏休みだから、おばあちゃんちに遊びに来てるんだ。」「そっか。私は、ずっとここにいるんだ。」
また、風が吹いてきた。木がゆれて、夏なのに涼しくなった。
「気持ちいいね。」
とサキちゃんが言った。
「そうだね。」
それから僕は、サキちゃんがセミ捕りを教えてほしいと言ったので、教えてあげた。
「もうそろそろ、お昼だね。また来るよ。」「うん。あっ、そうだ。お礼にこれあげるよ。」
ビーズで作ったネコだった。
「ありがとう。」
家に戻ると、おじいちゃんも畑から帰ってきていた。
「どうだ、都会と違って、いい所だろ?」「うん。自然に囲まれて良い所だよ。」「ハハハ、いっちょまえな事言うようになったなあ。」
昼ご飯を食べ終わると、走って神社まで行った。だけど、神社には誰もいなかった。もちろんサキちゃんも。
夕方になるまで待ってみたけど、サキちゃんは来なかった。もう帰ろうとした時、また風が吹いてきた。後ろをふり返ると、サキちゃんにあずけておいたはずの虫かごが置いてあった。
夜、おばあちゃんとおじいちゃんに聞いてみたけど、そんな子知らないと言う。
その次の日も、またその次の日も神社に行った。聞こえるのは、セミの鳴き声だけだった。
でも僕のポケットの中には、サキちゃんからもらったビーズがある。また、来年になったら来ようと思った。
完
【元記事:B-Search NEWS No.1352】