以前、ぼくの人生に特別な影響を与えなかったけど、忘れ得ぬ人たちがいるということを書いた。これは3回くらい書いたと思う。
まだあるのかよ。と言われそうだが、ふと思い出すことがある。
初夏が過ぎ、海開きのニュースが流れてくる。子どもの頃は、よく海水浴に連れて行かれた。親は海水浴は好きではなかったとあとになって言っていたが、子どもの頃の自分も大して好きではなかった。
ぼくは大きな浮き輪が手放せなくて、しがみつくように浮き輪で浮いていた。それでも一度、浮き輪が抜けて溺れたことがある。プール、海、温泉の大浴場と溺れることが多くて、水への恐怖は人一倍強かった。
ある海水浴の日も、プカプカと浮き輪で浮いていた。波があるので、思ってもいない方向に流される。そんなとき、2人組のお姉さんにぶつかってしまった。
「ごめんねー」とお姉さんたちは笑いながら言ってくれた。
小学生だったぼくはドキドキした。何か返したかも覚えていない。あとから思い返せば大学生くらいだったと思う。
ただ、お姉さんの肌の感触とカラフルな水着だけが、ぼくの心にすみついてしまった。
【元記事:B-Search NEWS No.1387】