第74回「忘れ得ぬ人〜海水浴のお姉さん〜」

以前、ぼくの人生に特別な影響を与えなかったけど、忘れ得ぬ人たちがいるということを書いた。これは3回くらい書いたと思う。

まだあるのかよ。と言われそうだが、ふと思い出すことがある。

初夏が過ぎ、海開きのニュースが流れてくる。子どもの頃は、よく海水浴に連れて行かれた。親は海水浴は好きではなかったとあとになって言っていたが、子どもの頃の自分も大して好きではなかった。

ぼくは大きな浮き輪が手放せなくて、しがみつくように浮き輪で浮いていた。それでも一度、浮き輪が抜けて溺れたことがある。プール、海、温泉の大浴場と溺れることが多くて、水への恐怖は人一倍強かった。

ある海水浴の日も、プカプカと浮き輪で浮いていた。波があるので、思ってもいない方向に流される。そんなとき、2人組のお姉さんにぶつかってしまった。

「ごめんねー」とお姉さんたちは笑いながら言ってくれた。

小学生だったぼくはドキドキした。何か返したかも覚えていない。あとから思い返せば大学生くらいだったと思う。

ただ、お姉さんの肌の感触とカラフルな水着だけが、ぼくの心にすみついてしまった。

【元記事:B-Search NEWS No.1387】

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