以前、一度しか会っていないけれど、心に残っている名前も知らない人たちについて書いた。
それの続編と言おうか。さらにさかのぼって、子どもの頃のなぜか覚えている人のことを書こうと思う。
ぼくは、普通自動車の後部座席に座ることが多かった。よくあるセダンタイプの車で、今の時代は駄目だと思うが、自由に動けて立て膝をついて後ろを見るのが好きだった。車が発進すると、後ろへ進んでいく感覚。
それは、ある信号で停まったときのことだった。後ろの車の人も同じタイプの乗用車で、運転手がはっきりと見えて目が合った。どんな人だったかは覚えていない。
ぼくは何を思ったか、じゃんけんをしようとして、最初はグーといった形で手を出してみた。そうしたら運転手の人も、手を出してじゃんけんをしてくれた。何回かやって、ほどなく信号が青に変わり、ぼくはキャッキャッ笑いながら前を向いた。
名前も知らない、でもなぜか覚えている人たちの記憶。次週も続きます。
【元記事:B-Search NEWS No.1367】