第28回「別れに慣れる」

別れの原体験は、小学5年生のとき。すごく好きだった男の担任の先生が、異動で別の学校に赴任することをクラス全員に告げたことだった。根拠はないが、6年になっても繰り上がって担任するような空気になっていたので衝撃的だった。

人気がある先生だったので、異動する旨を告げられたとき、教室はどこかお通夜のようになっていた。泣き出す子もいた。そのときにぼくは、別れというのは胸をえぐられるものだということを初めて知った。相性のいい人との別れは、なおさら絶望的な気持ちになる。

大人になって、身体障害があるぼくはいろんな人に支えられて生きている。すべて記憶に残らないくらい多くの出会いと別れを繰り返してきた。何回もそういったことを繰り返していると、悲しいことは悲しいが感傷的になっているヒマもないので、割り切るようにしている。悲しむことよりも現在進行形の日常生活の方が大事になってくる。

死による別れは何ともならないが、今の時代、別れても連絡を取ろうと思えば取れるツールがある。一度別れると1年に1回連絡するかしないかで、わざわざ頻繁に連絡する気持ちにもならないが、手段があることでどこか安心していたりもする。

また、失った空間に新しい人が入ってくることはある。人間は良くも悪くも多様で、別れた人にはなかった良さを感じたりすることもある。

春の別れと出会いがひと段落しているところだろうか。別れに対して特別悲観的にならないように生きていきたい。

【元記事:B-Search NEWS No.1337】

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