わたしがいたばしょ

まだ小さい手
赤くかじかんで寒そうだから
手をつないで おうちへかえろう


ねえちょっとだけ頭の片隅をかすめるくらい
それくらいのそんざいだろうけど
覚えていると嬉しいな
わたしがいたこと


つたなく発する「あいらぶゆー」
あのとき そういってくれたこと
それがなにより大事なの


抱きしめたこと キスをしたこと
ぜんぶぜんぶ日々に埋もれてく
それでも、覚えているかな
わたしがいたこと


わたしの呼吸と きみの呼吸
とけた時間がいとおしい
一瞬のように わたしはおとなになって
切ない気持ちに潰される
きみにはまだ早いから
いまを笑っていてくれないかな
北風小僧がやってきて
また長い冬のはじまり
雪はふるかな


あの小さな手
赤くかじかんでも気にせずに
きっと元気に 手を振っている


だいじょうぶ、元気だよ

雨の日

こんな狭い部屋じゃ
君のこと思い出すだけで日が暮れる
それでいいこともあるけれど
今日はなんとなく楽しくない


外は雨
でも昨日よりずっとやさしい
だから少し外に出てみようかな
そうしたらずっとこんな気分でいられる


わすれたいようでそうじゃない
ずっと痛いままでいたい
そうやってそうやって
いきてくつもり



買ったビニール傘
雨をはじくぐらいならちょうどいい
イヤフォン耳につっこんで
ノラのバラードとか聴いてみる


人はいない
だから今日はずっと静か
車が通って水たまりがはねた
濡れたけれど気にしないでいられる


わすれたいようでそうじゃない
ずっとこのままでいたい
君のこと 君のこと


今頃どうしてるかな
僕の独り言
白い息といっしょに
雨に潰されてく




わすれたいなんて思ってない
ずっと痛いままでいたい
そうやって 君のこと
好きでいたい

今日の明日

美味しいティラミス食べに行こうよ
きっと明日になったらまた忘れてしまうや
だから今日こそは行こうよ

泣きたい理由があったから
こうして泣いているはず
だけどこのからだはだれのものかわからない

苦いコーヒー飲んだら
もうここは出ていく
何だかすっきりしない
君のこと好きになってから

美味しいティラミス食べに行こうよ
何度でも誘うけどもう声には出来ないや
また明日になっちゃうんだな

お腹すいたけどどうでもいいや
それよりさっきの笑顔がちらつくよ
また明日になっちゃうんだな



また明日になっちゃうんだな

狸寝入り

期待がこなごなになったら
寧ろよかった
そうはいかないのは
その笑顔が相変わらずかわいいから

つっぱねたい心臓が
喜んで踊るから
ぼくはまた泣きたくなって
嘘をついてやる

無視できたら
無視してくれたら
よいのにな

ため息ついて
やぶれたソファで狸寝入り
君はくるかな
またまぶたを閉じる
君はくるかな
僕は泣くかな

ことば

ぶどうあじといえば
見えないところでこっそりと
手をつなぐように
ふたりだけの暗号が
くだになってつないでくれる


ずっとずっと知らないふり
だけどきっと暗号が教えてくれる
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めくるのはいつだろう