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その世から覗いた僕の女遍歴(旅田卓宗)

その世から覗いた僕の女遍歴(旅田卓宗)

2009年01月17日
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カテゴリ:恋愛小説
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彼女は代役だけでは我慢出来なかったのだ。

(僕の役割が終わったって事かあー!)僕は思わず夜空を仰ぎ見た。

頬を伝う涙はいつまでも止まらなかった。

満天の月が「愚かな男よ」と笑っていた。

でも僕の彼女への愛は真実だった。

以来F子と会う事も電話で話しをする事もなかった。

その日が僕達の別れの日になったのである。

それでも僕は彼女の生活を支える意味での府議会議員の

後援会への政治献金だけは続けた。

彼女はその後も元気に府議会議員の事務所で働き続けていると

噂に聞いたが会うことはなかった。

僕はその世から望遠鏡でF子との別れの日を眺めていた。

この世の僕が公衆電話から何度も電話をかけていた。

彼女の家の中では残酷にも電話器の上に無造作に座布団が掛けられていた。

奥の寝室ではF子が若い男と激しく絡み合っていた。

(やっぱりな!・・)

僕は聴診器を彼女の胸の方に向けてみた。

何の声も聞こえて来なかった。

彼女の心から完全に僕が消えてしまっていたのだ。

僕は望遠鏡を握り締めたままベッドに横たわった。

彼女との切なくも楽しく幸せだった日々が蘇って来た。

何だか涙も枯れ果てたように思った。

「まあいいか、僕は真実、彼女を愛し貫いたんだから・・。

僕がインポになってしまったから彼女も仕様がなかったんだろう?」

僕は自分自身に言い聞かせ納得させようとした。

「セックスは代役を頼まざるを得なかったが、彼女の生活を支え、

彼女の夫としての代役と子供達の父親としての代役は立派に果たしたんだ。

あの可愛い三人の子供達を育てたことは紛れもない事実だ。

僕は僕を誉めてやりたい!」

彼女への思いと切なさを慰めるように何度も自分自身に言い聞かせ続けた。

やがて僕はいつの間にか胸のつかえもおさまり

スーッと深い眠りに落ちていったのである・・。

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最終更新日  2009年01月17日 11時50分39秒
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