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> ● 横山秀夫
「顔 FACE」(徳間書店)
この小説は、まず廃校となった山間の分校跡地からタイムカプセルを掘 り起こし、開封をする。そしてそこには一人の婦警さんになりたいという作文が出てくる。このプロローグから始まる。 主人公は、D県警本部で働く平野瑞穂。今は広報でイラストを描いている。彼女の心は深く傷ついていた。それは以前、鑑識課で犯人の似顔絵を作成する仕事をしていたときはまだ希望に満ちていた。どんな傷つくような周りの言葉にも耐えることが出来ていた。 それが1年前、老婆のひったくり事件で犯人の似顔絵を作成した。ところが捕まった犯人は似顔絵とは似ていなかった。それは似顔絵をみて犯人を知っているコンビニ店主は「こいつは何かをやらかす」そんな先入観があったために似顔絵の髪型だけを見て「あいつに間違えない」と口走ったためにこうなってしまった。 先入観、思いこみというのは怖いものだと思う。実際は違うものでも思いこみようによってはそう見えてきてしまうと言うことは実際間々あること。会見の時間が迫り、記者たちには「似顔絵逮捕第1号」とおふれを出していたため、せっぱ詰まった課長は瑞穂に似顔への改ざんを申しつけた。そして彼女は命令にしたがった。しかし、その裏で心は傷つき自己嫌悪と後悔にさいなまれ無断欠勤、失踪騒ぎ、半年間の休職となり、広報へと移動してきた訳だ。 ここには5つの事件が彼女の目を通して書かれている。その一つ一つには悲しみに満ちた心が描かれていると思う。そして事件を絵を通して解決していく瑞穂の心の葛藤も。彼女の心の傷口がいつふさぐことができるだろうか。
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「第三の時効」(集英社)
「犯人か、刑事か。追われているのはどっちだ。男たちのほこりがぶつかりあう。これが警察小説の白眉!」(帯より) 警察小説を手がけたらこの人しか思い浮かばないだろう。 「半落ち」「顔」など。 ここには6つの短編が収められている。犯人と刑事の心理的葛藤と戦いが現されている。 F県警本部ビルにある捜査一課は三つの班に分かれ、事件をとおして、プライドをかけライバル心をもって事件を解決しようとしている。刑事としての苦悩、心の葛藤、部下から上司にむけた不信感、上司の苦悩が見事なタッチでかかれている。 その中で唯一の主人公、捜査第一課強行班班長朽木泰正、彼はある事件をとおして絶対笑わなくなっていた。なぜ笑わなくなったかというと、最初の沈黙のアリバイの冒頭にでてくる、この一文に結びついてくる。 「二度と笑わないでください。死ぬまで笑顔を見せないと約束してください。たっちゃんはもう笑えない。笑いたくても笑えない。あなたがそうしてしまったのです。いつまでも覚えていてください。 たっちゃんを死なせたこと、片時の忘れずにいてください。どうかお願いします。死ぬまで笑わないと誓ってください。」 幼子をもっていた母親から言われた言葉、朽木の心にどのようにのしかかっているのだろうか。ただ一つ言えるのは刑事も人間であるということ。 あなたも横山ワールドをたのしんではいかがだろうか。
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「臨場」(光文社)
この物語は8つの事件からできている。それぞれに新聞記者、検察官、婦人警官、刑事など、いろいろな人の目を通して書かれた短編集で、その中で共通している人物が一人いる。 それは『終身検視官』と言われている、倉石義男。校長といわれるほど、彼を崇拝している刑事や検視官たちが大勢いる。そんな彼が様々な事件を手がけ、一見自殺と思われる死を実は殺人事件だと看破したり、他殺だと思われる死を自殺だと、彼は眼力のすごさで次々と解決していく。 読み始めていくと、死と生について考えさせられていく。まさに人間愛が込められた一品であるといえよう。
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