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● アンネ・フランク

「アンネの日記」(深町眞理子訳/文藝春秋)

十四歳から十五歳にかけて、キティと名づける日記に呼びかけながらドイツ占領下ポーランドでの隠れ家での八人の生活を鋭い観察力、繊細な感受性、機知、卓抜な政治感覚をまじえて記録し、ペーターとの思春期の恋も豊かで美しく、泣きたくなるほど純粋だ。そして、アンネという少女の喜びと悲しみにひとしお親しみを感じたころ、日記は唐突に中断される。

【こうした不幸が終わるまでじっと耐えて待つしかありません。ユダヤ人もユダヤ人以外の人もみんな待っています。全世界が待っています。そして、そのいっぽうでは大勢の人が死を待っているのです。】 1943.1.13

【彼女はぼろぼろの服を着て、やせこけた、やつれた顔をしていました。目だけが異様に大きく、その目がとても悲しげに責めるようにこちらを見ているので、私にも彼女の内心の思いが読み取れました。「ああ、アンネ、どうして私を見捨てたの。この地獄からすくいだして頂戴」気の毒にいったいどんな気持ちでいたことでしょう。どうか、神様、ハンネリをお守りください。そして、彼女が一人ぼっちにならないようにしてあげてください。そして、もしもわたしにかわってわたしがどんなに彼女の身を気づかっているか伝えてくださったら、きっと彼女はより以上の勇気を見つけ出すでしょう。】 1943.11.27

アンネはベルゲン強制収容所で姉とともに死去した。母も殺され、奇跡的に生還した父オットーは、この日記の刊行に全生涯をかけたという。

(文/田中洌)

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