ホーム > ブックレビュー > あ行 >
● ポール・オースター

「最後の物たちの国で」(柴田元幸 訳/白水Uブックス)

ストーリーは陰鬱。最後の物たちの国でというタイトルのとおり、そこは、食べ物や本や飛行機などあらゆるものが消えていく国、そして時には人間も。ものが消えるだけでなく、そのも のが消えることによって、そのものをあらわしていた、言葉も消えていく。まさに消失がくりかえされるところ。政権は何度も変わり、治安も悪く、おちおち歩いていられないところ。赤 ん坊はもう何年も生まれていない、絶望の国。

そんなところへ、主人公のアンナは行方不明になった兄をさがすためにやってくる。裕福な家庭に育ったであろう、世間知らずで少々高慢ちきなところもあったであろうアンナは、食料を手に入れるため、ささいなお金を手に入れるため、たいへんな努力をしながら、どうにかやっていく。救いなんて、どこにもないのではないかという悲しい出来事が続く。悲惨としかいいようのない小説。

それなのに、私はこの本を読み終わるといつもある種の希望を感じる。それは、主人公アンナがかつての恋人?にあてた手紙という設定のためか、静かに、だけれども、挫けない、そんなアンナの語り口にあるのかもしれない。

オースターの小説の中ではめずらしく、女性が主人公で、ストーリーも寓話的で、独特の位置を占める作品だといえると思います。オースターらしくない小説といえるかもしれないけれど、私は、この作品が実は一番好きです。

(文/mocha website

本の詳細&購入→ Amazon.co.jp楽天ブックス

ホームブックレビュートップあ行一覧


■索引(著者名)

■サービスメニュー

-

制作・運営/こざるプロ 管理人/こざる
Copyright(C) 2000-2006 COZAL-Pro. All Rights Reserved.